2021年5月6日木曜日

【インタビュー】「とよたの新しい博物館」豊田市新博物館基本計画策定委員会委員長の南山大学 黒澤浩教授インタビュー(2020.1掲載)

2023年にとよたに新しい博物館が建設予定!ということで、どんな博物館になるのかについて豊田市新博物館基本計画策定委員会委員長の南山大学 黒澤 浩教授にお話を伺ってきました。

ミュージアムと博物館> 
最近ミュージアムっていう言葉を使うところが多いでしょう?
でもミュージアムと博物館は実はイコールじゃないんです。幕末に日本人が遣米使節とか遣欧使節とか行ってミュージアムを見るわけですよ。それを帰ってきてどういう風に日本語で表現しようかといろいろ考えてできた言葉の一つが博物館だった。さらにそれを広めたのが福沢諭吉なんです。『西洋事情』の中で「博物館」っていう言葉を使ったんです。
だから博物館っていうのは訳語ではなくて、日本人がそういうものを見た時に「一体なんて表現しようか」っていろいろ考えて出てきた言葉なんです。
「博物」は元々は漢文の言葉で「広くものを知る」という意味。だからいい言葉だと思うんですよね「博物館」って。

<野生の思考>
フランスの人類学者でクロード・レヴィ=ストロースっていう人がいて、彼の有名な著書で『野生の思考』があります。
その中に「野生の思考」、さらにそれと対極にある「栽培された思考」っていう言葉があるんですね。「栽培された思考」とは「出来合いのものでそれを学ぶ」っていうことで、その出来合いのものに思考を慣らしてく。
しかし「野生の思考」っていうのはその逆で、「あり合わせのものを組み合わせて何かを作ってしまう」っていう思考です。つまり決まりきったものではなくて、その手元にあるもので何かを作っていくっていうのが「野生の思考」なんです。
でも今の博物館って「栽培された思考」になってしまっていて、出来上がったものをありがたく拝見する、拝聴するという形になってしまっている。でも僕はやっぱり「野生の思考」がいいなと思っていて。新しい博物館でいろんなものを見て受け取ったもので自分の中でいろんなものを組み立てていく、そういう場であってほしいなって思います。



<とよたの新しい博物館>
新しい博物館では、鑑賞者の体験や市民に向けての活動っていうのがメインになってくるかもしれないですね。展示はもちろん重要ですけども、それよりも今度の博物館は「市民がそこで何をするか?」っていうところに重点を置いた博物館になると思います。
「ふるさと」っていうのを基本的なコンセプトにしているんですが、実は豊田に限らず最近は土着の人って少なくて流入人口の方が多いんですよ。外国人も企業関係者で結構いるし、そういう人たちに「ふるさと」っていってもリアリティがない(笑)
だから「ふるさと」と思ってもらえるような、出身はどこであっても「ああ豊田に来てよかったな」って思えるという意味での「ふるさと」。
 基本的な問いかけとして「なんで豊田だったんだ?なぜ?」というところがあって、博物館から出てきた時に「ああ やっぱりだから豊田だったんだ」という風に思ってもらえるようになるといいですね。

お話:
豊田市新博物館基本計画策定委員会 委員長 
南山大学 人文学部人類文化学科教授
黒澤 浩さん

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