2021年5月5日水曜日

【コラム】元日からダラダラと『演出』について考える 古場ペンチ(2014.2.3掲載)

2014年。元日。
今年も相変わらず見てしまったのは、『芸能人格付けチェック 2014年お正月スペシャル』です。

年末年始は必ず長崎の祖父の家で過ごしておりますが、なにしろ田舎過ぎて、何もやることがないんですよね。
だので、思いっきりおいしいご飯を食べて、石油ストーブでぬくぬくした部屋でおもっくそダラダラしながらテレビを見る。
そして、18:00~21:00は「GACKT様すげー」とか言いながら自分の格を測ったりするのです。

今年、僕はひとつ楽しみにしていた問題がありました。
それは『演出』の問題。

簡単に言うと

同じシナリオのショートムービーを2つ見て、プロが撮ったものとそうでない者が撮ったものを判別する

と言う問題です。
今回の監督は、代表作『呪怨』の清水崇監督、吉本興業の西川きよし監督のお二方。

楽しみにしていたと言うか、リベンジに燃えていましたね。
絶対に負けられない戦いがそこにはあるのです。

んで。結果や如何に。

…その前に、何故、『リベンジかつ負けられない』のか。
恥ずかしながら『去年しくじったから』ってのは、まぁ、そりゃそうなんですが、
もう一つの理由は『去年より自分の"演出力"が向上したと思っているから』なんです。少しですけど。
僕はずーっと演劇畑で育って来ましたが、最近、短編映画の脚本・監督・編集なんかやったりして、映画の畑も耕し始めたのです。
実際、15分の畑を耕しました。
たった15分ですが、演劇とは別の喜びやら苦悩やらがたーんと実って、僕の血となり肉となったような気がします。

と言うわけで、今年の演出の問題は絶対に当てたかったのです。
結果や如何に。


はい。間違えました。


何だとぉぉぉ!!!?
すっげぇ自信あったのにぃぃぃ!!!
自信あり過ぎて、むしろ、ちゅっげぇじちんあったのにぃ!

僕が食べたあの実は何だったのでしょうか。
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたいです。そして誰かに蓋をして欲しいです。

「西川きよし監督はお笑い芸人だから面白可笑しく撮るだろう」とか、そう言う偏見は抜きにして判断したつもりです。
僕が判断の基準としたのは『随所に見られる演出が、効果的かどうか』です。
プロの作品の方が、効果的な演出を炸裂させるだろう、と。

答えが分かった後に、清水監督がどこに演出的な工夫をしたのかご本人による解説があったのですが、
そのどれもが僕には≪逆効果≫に思えた部分でした。

例えば、物語の終わりに『主人公の女性をケチャップまみれにする』際の演出。
どの程度やるかが判断の分かれ目になるのですが、
清水監督は≪あり得ないほどド派手≫に、きよし監督は≪あり得ないこともない程度≫に。
僕はこのあり得ないド派手さを見て、「節操がないなぁ」と思ったのです。
僕は、あり得ないことをやるには、あり得なさを肯定する前フリが必要だと考えています。
前フリなしでやることが≪メリハリ≫だという意見もありますが。

今回このコラムで言いたかったことは、清水監督作品への批判ではありません。
僕がまだまだひよっこであることでもありません。
批判できるほどの器でもないし、ひよっこであるのは当然ですからね…。

 演出って難しいですね。でも、演出の違いに気づいて、自分で選んでいきたいですね。

ってことです。

演劇も映画も、さまざまな選択肢からひとつの演出に絞って作品を作り公開するわけですが、
演出を決める瞬間はいつも緊張と責任を感じています。
でも、それが演劇や映画の魅力でもあると思っています。

2014年。
演劇に映画にもっと多く携わって、どんどん畑を耕し、おいしいものをたくさん食べたいですね。
そして、たくさんひり出したいですね。

古場ペンチ こば・ぺんち
役者・演出家。個人ユニット『Pinchi』にて活動中。福岡で学生時代から演劇をはじめ、来豊後も様々な舞台に出演。また、作・演出も手掛ける。

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