2021年5月5日水曜日

【コラム】劇団☆空跳ぶ紙ひこーき旗揚げ公演「Bank Bang Lesson」所感 清水雅人(2014.2.10掲載)

 豊田で新しい劇団が立ち上がり、旗揚げ公演をすると聞き、いそいそと見に出かけてきた。2月8・9日の豊田産業文化センターでの上演作である。
 豊田在住の役者だけでなく、近隣地域で活動する役者も含めての旗揚げということで、知っている役者が3人、それ以外は初めて見させてもらう役者さんという状況だったので、より客観的な所感を述べられたらと思う。

 ただし、作は、高橋いさを氏の全国で多数上演されているホンということで、内容、テーマ的な所感は割愛させていただく。

 まずは、よかった点について。
 豊田産業文化センターの大広間での公演はよかった(本ブログで多目的ホールとしていたことお詫びします)。
 大広間は、言葉どおり100畳ほどの広い和室で、レトロな舞台があり、いわゆる宴会場という感じだ。過去にもここで演劇上演があったと聞くが、筆者はここでの観劇は初めてだった。畳なので席はなく、座布団を敷いてでキャパは100~150人といったところだろうか。
 10年ほど前から地元での演劇を見ているが、以前は、豊田市民文化会館小ホール、豊田産業文化センター小ホール等、いわゆるホールでの上演が主で、200~400席のキャパ、広さが重荷になっている印象が拭えなかったが(集客的にも技量的にも)、最近は、もう少し狭いスペースを積極的に活用した演劇上演も増えており、より“近い”演劇が見られるのは、アマチュア劇団を楽しむ上でも、また今回のような旗揚げ公演の上演という観点からでもいいことだと思う。
 効果的な照明等の舞台演出は望めないが(今回も、役者が舞台の前面に出てくると顔が陰り、表情が見えにくくなる等はあったが)、それほど大きなデメリットではないと思う。

 それから、約1時間15分という上演時間の短さもよかった。不勉強ながらオリジナルのシナリオを知らないが、今回用にシナリオを詰めているのだとしたら賢明な判断だと思う。やはり2時間前後の公演を維持するには、劇団としてのかなりの力量を要するからだ。

 公演自体について言えば、こういう言い方をすると褒めてないようで恐縮だが、“ちゃんとしていた”とまずは感じた。出演していた8人の役者の力量のレベルは高く、まとまっていて、見ていて安心感があった。「確かに近隣の達者な役者が集まったんだな」という雰囲気があった。最近豊田で見た演劇公演の中では一番安定感があったと思う。

 逆に少し残念だった点について。
 公演の内容は、とある銀行での強盗が襲ってきた時のための予行練習のはずが、どんどん白熱していって妄想的にエスカレートしていく、というコメディなのだが、会場で起こる笑いが圧倒的に少なかった。ホンとしても、重厚なテーマを追求するというより、登場人物たちのエスカレートしていく様がおかしいという内容だったので、笑いの少なさがまずは気になった。
 これは、豊田の観客が、まだまだ硬いということもあるかもしれない。実際、もう少し笑いが起こってもいいのに、と思う場面も多数あった。

 それから、これはとても微妙なことなので断言はできないが、少しずつ演技のテンポが遅かったのかもしれない。目に見えてテンポが悪かったわけではなく、感じないほどの微妙なテンポなので、筆者は初日の8日の回を観劇したのだが、9日の回は役者のみなさんのテンポが合致し、大きな笑いが起こっていたのかもしれない。

 あるいは、8人の登場人物のキャラ立ちが、はっきりしていない印象もあった。支店長含め銀行員が4人登場するが、役回りやキャラクターが最後まで曖昧で、当初のキャラ設定が、進むにつれてどんどん外れていってしまうという面白さが出しきれていなかったように思う。
 これは、既存のホンを上演する上でぶつかるジレンマかと思うが、例えば、支店長役の小林は、長髪とヒゲでおよそ銀行の支店長らしくみえないが、そのことには触れられず、どう見ても銀行員2役の古場より小林の方が強面に見えた。例えば、カップルの熊谷と柚木崎は親子ほど歳の離れたカップルだが、そのこともいじられなかった。狭い会場でもあり、顔がはっきり見えるので、ベタだがもっと貪欲にそういうギャップで笑いを取りにいってもよかったのではないかと思った。

 そして、これは、よかった点と表裏一体なのだが、ちゃんとまとまっていたがゆえに、「次に何が起こるんだ?」というスリル感が少なく、こじんまりとした印象、ゆえに惜しいという印象が残った。

 観劇した直後にこれを書いているので、批評というより、感想、所感になってしまったが、なにより、1つ新しい劇団が立ち上がったことは喜びたい。
 豊田において、立ち上がった劇団の単独公演や2回目以降の公演がなかなか起こらない状況で、この新劇団には、精力的に公演を続けていって欲しいと思う。
 残念だったと感じた点も、公演を継続していき、この劇団の中での各役者の立ち位置がはっきりしてくれば、必ずよくなっていくだろうと感じられたことも最後に申し添えておく。

清水雅人
映像像作家・プロデューサー。豊田を中心に活動する映画製作団体M.I.F.代表。映画製作の他にも、小坂本町一丁目映画祭運営、豊田ご当地アイドルStar☆Tプロデュ―スなどを手掛ける。

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