2021年5月5日水曜日

【コラム】やらなければならないこと 清水雅人(2016.6.24掲載)

 この<TAG>の元となった<TUG>Toyota Underground Galleryが開催されたのは2012年度なので、もう丸3年が経った。<TUG>は、市からの依頼でとよた市民ギャラリー(VITSの地下)の有効活用事業として、豊田市内の演劇・映像・音楽・アートの人材がコラボして1年の内に3回イベントを開催した。2000年代中盤あたりから各自で活動を始めたそれらの人材が繋がり始めた時期でもあり、規模は決して大きくはなかったが(集客もささやかなものだった)、3回のイベントの内容はとても実験的で(実際それはラボと名付けられていた)、ある意味ぶっとんでいたと自負している。
 <TUG>自体は、「できれば3年はやりたいね」と言っていたにもかかわらず、市に梯子を外され(特に理由もなく予算カットされ)、あっけなく1年で終了となったが、その代わり、事業・イベントを行うのではなく、情報と人材のネットワークを作るという趣旨で、2013年<TAG>が生まれた。

 ここからはただただ反省になってしまうが、<TAG>ではまずブログを立ち上げて情報発信をしていき、やがて少しずつやることを拡げていこうという目論見だったが、忙しさにかまけて(ご当地アイドルStar☆Tを全国展開させる時期とも重なり)、現状維持のまま約2年が過ぎてしまった。
 
 だが、この2年の間、ずっと<TAG>は「やらねばならないこと」として頭の中にあり、常に様々な構想を練ってはいた。
そのコアにあるのは、情報の不均衡性をなんとかしたいとい思いだ。例えば、東京の下北沢の小劇場でやっている芝居については知っているのに、地元のホールでやっている芝居については誰も知らないという事実に疑問を持つこと。「文化の地産地消」とはプレゼン用によく使わせもらうフレーズだが、地産地消を目指すのは、もちろん文化に限ったことではない。もともとは食品流通から出た言葉だと思われるが、経済全体、政治、その他なんでも地産地消は目指さなければならない、難しいことになってしまっているのだ。そして、それらを象徴的に表しているのが情報の不均衡性であり、情報の不地産地消性なのだと思う。
 そして、情報は情報がゆえに、自明性を疑うことの困難さを伴う。
 
 <TAG>では、豊田という地域性の括りで、文化芸術を入口に面白そうなことの情報をまとめネットワーク化して発信していきたい。1次的な告知等情報はもちろんだが、レポートや批評、考察的な2次的情報も発信して事業にフィードバックすることによって継続的な循環を作っていきたい。そこで生まれる人の繋がりのネットワークを継続化していきたい。

 1次的2次的情報発信は、ブログやフェイスブックにて行っていく。加えてフェイスブックは各自がゆるやかに参加する情報と人材の交流の場にしたい。
 情報を届けるために、情報を集約してメールマガジンも配信する。ネットに不慣れな人のために紙による情報誌も発刊したい(公共施設、店舗等に設置する)。
 そしてこれからは、映像も配信していく予定だ。これは、テーマを設定して(豊田の演劇、映像、音楽、アート、その他なんでも)、ゲストを招いて、対談するものをメインとしたい。内容は、そのことには豊田においてどんな歴史があるのか、どんな人たちがどんな思いでやっているのか、これからどこに向かおうとしているのかなど、いうこれまで前に出てこなかった情報が含まれるはずだ。これは文章にするには膨大で、また話すニュアンスも重要だと考え、映像という形で発信したい。

 豊田という地方都市で、情報と人材のネットワークを継続する、文化の地産地消を進める。とてもシンプルで、誰もが考えていることだと思う。でも、誰もやってない。だからこれは、「やらなければならない」ことだと思っている。
 <TAG>のリニューアルが、その思いを具体的なものにする機会になるよう頑張っていきたい。

清水雅人
映像作家・プロデューサー。映画製作団体M.I.F.元代表。映画製作の他にも、小坂本町一丁目映画祭運営、豊田ご当地アイドルStar☆Tプロデュ―スなどを手掛ける。

0 件のコメント:

コメントを投稿