2021年5月6日木曜日

【インタビュー】とよたデカスプロジェクト2019採択事業「ART DAYS Toyota(大賞)」「SENSORIAL DRIVE – ヒトと車の共感覚 –」「Road of Cannes! 2」「とよたハックキャンプ・variable form」インタビュー(2019.10掲載)

近年「アートプロジェクト」という言葉をよく聞くようになりました。現代美術用語辞典によれば、アートプロジェクトとは「作品そのものより制作のプロセスを重視したり、美術館やギャラリーから外に出て社会的な文脈でアートを捉えたり、アートを媒介に地域を活性化させようとする取り組みなどを指す」とあります。
豊田市においても、豊田市内で行うアートプロジェクトを支援する「とよたデカスプロジェクト」が2011年よりスタートしました。これは補助金支給ではなく応募・プレゼンにより採択された事業に賞金を交付するというこれまでの行政的施策とは少し違うプロジェクトです。
「地域住民や関係者との連携しながら、事業の企画立案から実施まで総合的にマネージメントできる人材の発掘と、応募者自身が実践をつみながらスキルアップを図ることを目的として」いるとよたデカスプロジェクト。とよたのアーティストの活躍も目立ちます。前回に引き続き2019年度採択事業より4組にお話を伺いました。

大賞:ART DAYS Toyota SHIMAYAGI ART
https://artdays-toyota.jimdofree.com/
参加アーティスト
浦野 友理
足助地区生まれ。旭丘高校 美術科卒業。愛知教育大学 造形文化コース 染織 卒業。

沖縄芸術大学 デザイン専修 修了後、美濃、沖縄、小原にて紙漉きの技術を学ぶ。現在、愛知県立芸術大学 非常勤講師。

私は素材をよく知ることが重要だと思っています。紙は、自分が求める美しさに寄りそってくれる素材であり、私自身も紙の持つ特徴に寄りそい制作したいと思える素材です。
生まれ育ってきた環境や、実際に目にしてきたモノゴトから作品のイメージを貰い、制作しています。今回は古い作品も展示します。
その作品は、育った土地があってこそ出来た作品です。



籏 寿恵
1993年愛知県豊田市生まれ 愛知教育大学 造形文化コース卒業 愛知教大学大学院 教育学研究科芸術教育専攻 修了 現在、多治見市文化工房ギャラリーヴォイス勤務。

愛知教育大学へ進学し、ガラス、陶芸、金工、染織の中から専攻を絞っていく課程で、土を扱うことに一番親しみを覚え、やきものを選びました。
今の作品は、大学3年生の時に出された「手捻りとたたらで作品を作る」という課題で作ったものを元に制作しています。私は大学3年での制作で、思いきり土に触り、何も考えずに形を作っていくことの楽しさに目覚め、土の有機的な質感の面白さに魅かれました。
粘土という素材での制作は手で触ると、触ったままの形が出てくる所が魅力だと思っています。その触ったままの形を活かし自分らしい作品を作るのが、今の目標でもあります。



光岡 幸一
愛知県生まれ 東京藝術大学大学院油画科修了

元々は建築を学んでいたが、東京の下宿先から愛知の実家まで徒歩で帰った事をきっかけに人と直接関われるパフォーマンスに興味を持ち、制作をはじめる。
観察と対話によって場所の特性を見出して作品に取り込みつつ、地域の人やものと関わりながら制作を行う。
主なプロジェクトに、警察に撤去されそうになっていた上野のとあるホームレスのおじさんの壊れた台車を勝手に回収して治して返そうとした。など。



伊藤 正人
1983年愛知県豊田市出生、名古屋市出身。

美術作家として活動する傍らで小説や自主発行のフリーペーパーでエッセイ等を執筆。主な著作に、「アインソフの鳥」note house(2017)、「仲田の海」大愛知なるへそ新聞(2016)、「リュウズの言象」(2015-)など。
生まれてから二歳になるまで住んでいた平芝町の家がいまもまだ残っている。
少なくとも築四十年ほどになる平屋建ての古い官舎で、庭がずいぶん広かった。十数年まえにたずねたときには空き家になっていて、たまたま出会った向かいの家のおばさん(おばさんは赤ん坊だったころのわたしをおぼえていた)といっしょにその庭へ忍び込んだ。濡れ縁にすわって庭を眺めると、おだやかな秋の光につつまれた芝生が黄金色に輝いていた。住み心地のよさそうなところだと思った。いや、実際に二歳までそこに住んでいたのではあるが。昨年末にたずねたときは雑草が伸び放題でずいぶん荒れていたが、台所と思しき磨りガラス越しの窓辺に物が置いてあって、だれかが住んでいるような生活の気配がうっすらと漂っていた。



柄澤 健介
1987年 愛知県豊田市生まれ
2013年 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科彫刻専攻修了 

現在、主に木を素材に制作しているが、チェーンソーを使って木材を荒彫りしていると、木材の芯へ向かって内部を表出させているような感覚がある。結局それは彫られた時点で表面となりそのさらに奥に内部ができるのだが、内側の形に触れてみたいと思っている。彫ることで物質に空間が浸食し、彫刻の内側へと触覚が展開されていく。表皮(表面)を境に隔てられている関係を解体し、内と外を同時に且つ等価に形にできないか試みている。この展示では、見るともなく見ている風景に潜在するスケールを、彫刻という物質に還元し、再構築したいと思っている。



三瓶 玲奈
1992年愛知県生まれ2015年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業 2017年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画 修了

私は日常の中で印象に残った風景を描いています。風景が記憶に残る条件には、特徴のある光や風や音をはじめ、何かが起こった状況や体験など多くの可能性があります。

私が捉えたものは、光によって照らされた強い色であり、それを断片的に記憶された印象としての風景です。その印象としての風景は記憶のかぎり私の興味を惹き続け、その風景を知っているという感覚で私の視界を覆います。その風景がいつ、どこを示しているのかを知るために、私は様々な場所に訪れこの目で見ることを決めています。制作に関しても同じく、多くの風景の中を実際に歩くことによって再確認と再構築を行っています。
その中で一つ、気付いたことがあります。
過去に訪れたことがない場所においても、過去に使った色で、さらに同じプロセスを使った表現がしばし繰り返されるという事実です。
私は仮説を立てました。強い印象の元を辿り、意識して歩き続けるのであれば、その行為自体が自分自身の持つ原風景そのものをかたちづくり、対峙を可能にするというものです。
私は、私の中の一番古い印象の記憶を知りたいと思っています。
光の風景が印象に残る要因を自身の経験をもって特定し、そして、その光の景色を他者と記憶の共有としてキャンバスに留めることができるのであれば、自分自身だけでなく、絵を見る人が求める光にもコンタクトできるかもしれないと考えるからです。私は光の風景を求め、風景の中を歩き、今日も絵に向かいます。



SENSORIAL DRIVE – ヒトと車の共感覚 – MUSIFY
豊田駅前ロータリー・とよたEcoful town・豊田市美術館

https://musify.jp/

今回とよたデカスに採択されたことがきっかけで、豊田市の色々な場所に足を運び、たくさんの方々と接する機会を得るようになりました。豊田市には、明るい勢いのある方々が多いように感じます。私にとっては初めて愛知県内のコミュニティに関わっていくことができたことを大変嬉しく思っています。(野口)
豊田市内で展示をすることで、自動車産業に関わる方々にも数多く観ていただけることが予想されます。それはエンジニアにとっては、大きな挑戦です。今後の糧となるフィードバックが得られることを期待しています。(永井)
今回、とよたデカスプロジェクトに採択されたことがきっかけで製作を始めたこの作品ですが、来年は、居住地である長久手市をはじめ、名古屋、東京でも展示の機会を持てたらと思っています。
今回出品するEVは、10年前に製作した1号機をベースに大幅な改造を施した ”3号機"になります。次の4号機は、まったくのゼロからまた改めて製作してみたいと思っています。 また、私たちは二人とも福祉に興味があるので、様々なむずかしさを抱えた人をサポートできるようなデバイスの製作もしていきたいと考えています。人々を分断するのではなく人々をつなぐことに、芸術や技術の力を使っていきたいです。(野口)






-Road of Cannes! 2- NegaPosi FILM
11月9日(土)[映画祭]豊田市福祉センター

https://negaposi-design.jimdo.com/

ROAD OF CANNES!とグローバルなタイトルを挙げていますが目的は地方にクリエーティブな生態系を創りたい!というスーパーローカルプロジェクトです。
数年前に豊田市で市民から寄付を募り有名監督が映画を制作。しかし、撮影が終わると監督、役者、スタッフも東京に戻り残念ながら地方には制作のノウハウ等未来に繋がるものは残りません。
このプロジェクトのキッカケの一つに老いた母の言葉がありました。
「もう歳なんだから畑を耕さないで!」と私。
「耕さないと土が死ぬ」とは母の言葉。
そう、よく言われる「文化不毛の地」も同じ。土を耕さない限り永遠に不毛が続きます。
地方に多くの監督、多くの作品を生み出す土壌が出来れば、脚本、役者、音楽、CGなど様々な才能に多くのチャンスが生まれ、クリエーティブな生態系が生まれます!このプロジェクトは「まちおこし」と「まちの掘り起こし」の二つの両輪を廻す前例の無い市民発信のプロジェクトです。
「映画制作」と「映画制作ワークショップ」そして「とよたいかんぬ映画祭」3つの鍬で地域のクリエイティブを耕し、地方創生の映画制作の文化を創りたいと考えています。
いつの日か、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩く監督が、この地から生まれる事を目指して。





-とよたハックキャンプ・variable form展-MOBIUM
http://www.mobium.org/toyota_hack_camp/

今回の企画「とよたハックキャンプ」は豊田市の小原地区を中心に、移動型ラボ「MOBIUM」を使って参加者と共にフィールドワークを行い、現地を観察することで発想を得て作品を作る、というプロジェクトです。小原地区は以前から興味があったので、今回調査やワークショップを行うことができてよかったということと、今回デカスプロジェクトに参加することで、手助けやアドバイスをいただける他のチームや、地域の方と出会えることができ、参加できてよかったです。特に小原在住の作家の安藤さんにはとてもお世話になりました。
現地の資源ということで、特に小原和紙を使って異素材との組み合わせや、皮の代用として和紙を使った行灯太鼓を制作するなど、一定の成果は上がったかと思います。
ただ、今年はワークショップから展示までの期間が非常に短かったため、まだまだ調査や地元の方との交流が足りないと感じましたので今後も長い目でプロジェクトを続けられたらと考えています。
7~8月に実施した小原でのワークショップの成果展を旧豊田東高校で10/14まで開催しています。その後は10/20にも小原交流館で今回の展示と和紙で太鼓を作るワークショップを行います。
以前にも岐阜県の根尾という地域で同じような活動を行なっているのですが、バスごと工房がやってきて、ワークショップや展示を行うことができるので、さまざまな場所で展開できるかと思います。
今回の経験をもとに、別の地区や県内外でも活動を広げられればと考えています。

f:id:toyotaartprogram:20191029054628j:plain

f:id:toyotaartprogram:20191029054624j:plain

f:id:toyotaartprogram:20191029054631j:plain

0 件のコメント:

コメントを投稿