2021年6月17日木曜日

【コラム】「市域単位での情報発信のあり方-<TAG>ダイアローグ 2021年6月号の補足を兼ねて-」清水雅人(2021.6)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/

 <TAG>ダイアローグ 2021年6月号「実際のところ、豊田でのコロナの状況はどうなのか?」で、うまくまとめきれなかった点や、時間の関係でできなかった議論をこちらで補足したい。

 生活圏、あるいは“わが街”として一番イメージできる範囲は市町村単位だと思われるが、市域単位での情報発信のあり方というのが、<TAG>のテーマの1つだと思っている。
 もちろん、市域単位での情報発信メディアは多数存在する。挙げてみると、、、
紙メディア
・新聞/一般紙の地域版(豊田版、三河版等)、地方紙(新三河タイムス、矢作新報など)
・雑誌・情報誌・フリーペーパー(とよたホームニュース、耕Life、Chaoo、ぶらりん、ピーポ等)
・広報紙(広報とよた、コミュニティだより、自治区だより等)
・各企業・団体・個人発行のたより、パンフレット、チラシ等
通信メディア
・ケーブルTV(ひまわりネットワーク)
・ラジオ(エフエムとよた)
インターネットメディア
・新聞等ウェブ版
・ニュースサイト(豊田経済新聞、号外NET、とよたふぁいるず等)
・各企業・団体・個人のサイト、SNS等
 ただ、これらを並べてみて感じるのは、ジャンルに偏りがあること、情報が限定的になること/あるいは広く網羅的になること、汎用性が限定的なこと、告知と評価の両立が難しいこと、などだ。
 例として、行政(市政)情報と飲食店情報と文化芸術情報を比べてみたいと思う。

 行政(市制)情報は、もちろんいろんな媒体で発信されている。
 だが、一般紙の地域版はスペースも小さく、扱う記事は限定的だ。広報とよたや市のホームページは網羅的だが告知が中心であり解説がないのでポイントが絞りにくい。ケーブルTVはいわば市政広報なので広報とよたや市の報道機関発表資料と変わらない。ひまわりネットワークでは市議会中継もやっているが、どれくらいの人が見ているのだろうか、、、。
 対して、市政を評価・解説・評論等する媒体・サイト等は新聞以外には、ほぼないに等しい(市議会議員のサイトやSNSで多少見られる程度か)。市政は、実は私たちの生活全般に大きく関わるが、それを扱うには、現在の新聞の地域版はあまりにも限定的だ。

 よく例に出すが、比べて飲食店情報は充実している。
 食べログやぐるなびといったグルメサイトで市内の飲食店情報はほぼ網羅されている。情報誌やフリーペーパーも飲食店情報が相変わらず中心だ。もちろん飲食店各自もサイトやSNSのページを持つところも多い。
 グルメサイト等の情報は網羅的だが、団体や個人が食べ歩きレポートなどしているブログやSNSページも多い。中にはかなり多くの読者を持つものもある。告知と評価が両立していると言っていいだろう。
 つまり、豊田で今日おいしい○○(ラーメン、和食、洋食、、、)を食べたいと思った時に、営業している店舗の候補と、それぞれのメニュー内容や味の評価が、情報として受け取れるということだ。

 文化芸術情報はどうだろうか。
 各団体、グループ、アーティストはサイトやSNSで情報発信している。公演や展示の会場・公共施設も情報発信している。だがそれらを網羅的に集約しているメディアはほぼない。
 その公演やグループ、アーティストの活動内容や実績はそれぞれのサイトやSNSをあたる必要があるし、客観的な評価や解説はかなり限定的だ(SNS等でも地元の壁があって、評価・評論は書かれない傾向がある。良くも悪くも友達の友達で知り合いだから)。

 <TAG>でやりたいことは、豊田の文化芸術の情報をある程度網羅的に集約することと、関わっている人たちの人となりを紹介して内容や活動の解説・評価・評論すること、この両軸を通して地元のアートを地元のより多くの人に知って、観てもらうことだ。
 情報発信についていえば、文化芸術以外の各分野でも(例えば、、、環境、福祉、農業、教育、まちづくり、市政、、、)、市内のその分野のある程度の情報が網羅集約されつつ、解説・評価もされている媒体(インターネット上が現実的だと思う)があるといいなと思うのだが、理想的に過ぎるだろうか。
※この分野ならそういう媒体が既にあるよという情報があれば教えてください。
 
 今月のダイアローグに話を戻せば、実はこのことに関わってくることばかりなことに気づく。
「市はコロナ対策についてもっと詳しいステートメントを出してもいいと思う」
「一市くらい感染対策を徹底してパブリックビューイングをやるっていうところがあってもいいのに」
「マスクをしないで自転車通学してたら学校に通報があって、学校からもマスクは外さないようにって指導があったみたいで、本当にナンセンスだと思う」
などなど。
 確かに、これらは今ここでこのような発言をしただけでは、変わらないだろう。
 変えていくには、市民のコンセンサスがある程度見えることが必要だと思うが、それはここで言ったような情報の集約と評価の場から始まるのではないかと思っている。
 意見交換や議論を通しておぼろげでもコンセンサスが見えるようになり、市民間でも市民と行政間でも信頼関係ができれば、独自のことやっても大丈夫だし、ごく少数のクレームに恐れて本来の目的を見失うこともなくなるのではと。
 もちろん、このような市民コンセンサスは、地域コミュニティや既存の団体などで形作られてきたと思うが、それらに属さない市民がどんどん増えている今、市域単位での情報発信のあり方がキーになってくると思っているがどうだろうか。


清水雅人(しみずまさと)プロフィール
2000年頃より自主映画製作を始め、周辺の映画製作団体を統合してM.I.F(ミフ Mikawa Independet Movie Factory)を設立(2016年解散)。監督作「公務員探偵ホーリー2」「箱」などで国内の映画賞を多数受賞。また、全国の自主制作映画を上映する小坂本町一丁目映画祭を開催(2002~2015年に13回)。コミュニティFMにてラジオ番組パーソナリティ、CATVにて番組制作なども行う。
2012年、サラリーマンを退職/独立し豊田星プロを起業。豊田ご当地アイドルStar☆T(すたーと)プロデユースをはじめ、映像制作、イベント企画などを行う。地元の音楽アーティストとの連携を深め、2017年より豊田市駅前GAZAビル南広場にて豊田市民音楽祭との共催による定期ライブToyota Citizen Music Park~豊田市民音楽広場~を開催。2018年2019年には夏フェス版として☆フェスを同会場にて開催、2,000人を動員。
2016年、豊田では初の市内全域を舞台にした劇場公開作「星めぐりの町」(監督/黒土三男 主演/小林稔侍 2017年全国公開)を支援する団体 映画「星めぐりの町」を実現する会を設立し、制作、フィルムコミッションをサポート。2020年、団体名を「映画街人とよた」に改称し、2021年全国公開映画「僕と彼女とラリーと」支援ほか、豊田市における継続的な映画映像文化振興事業を行う。
2017年より、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員就任し(2020年度終了)、あいちトリエンナーレ関連事業の支援やとよたアートプログラム支援を行う。


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