2021年5月6日木曜日

【インタビュー】とよたデカスプロジェクト2019採択事業「ART DAYS Toyota(大賞)」「SENSORIAL DRIVE – ヒトと車の共感覚 –」「Road of Cannes! 2」「とよたハックキャンプ・variable form」インタビュー(2019.10掲載)

近年「アートプロジェクト」という言葉をよく聞くようになりました。現代美術用語辞典によれば、アートプロジェクトとは「作品そのものより制作のプロセスを重視したり、美術館やギャラリーから外に出て社会的な文脈でアートを捉えたり、アートを媒介に地域を活性化させようとする取り組みなどを指す」とあります。
豊田市においても、豊田市内で行うアートプロジェクトを支援する「とよたデカスプロジェクト」が2011年よりスタートしました。これは補助金支給ではなく応募・プレゼンにより採択された事業に賞金を交付するというこれまでの行政的施策とは少し違うプロジェクトです。
「地域住民や関係者との連携しながら、事業の企画立案から実施まで総合的にマネージメントできる人材の発掘と、応募者自身が実践をつみながらスキルアップを図ることを目的として」いるとよたデカスプロジェクト。とよたのアーティストの活躍も目立ちます。前回に引き続き2019年度採択事業より4組にお話を伺いました。

大賞:ART DAYS Toyota SHIMAYAGI ART
https://artdays-toyota.jimdofree.com/
参加アーティスト
浦野 友理
足助地区生まれ。旭丘高校 美術科卒業。愛知教育大学 造形文化コース 染織 卒業。

沖縄芸術大学 デザイン専修 修了後、美濃、沖縄、小原にて紙漉きの技術を学ぶ。現在、愛知県立芸術大学 非常勤講師。

私は素材をよく知ることが重要だと思っています。紙は、自分が求める美しさに寄りそってくれる素材であり、私自身も紙の持つ特徴に寄りそい制作したいと思える素材です。
生まれ育ってきた環境や、実際に目にしてきたモノゴトから作品のイメージを貰い、制作しています。今回は古い作品も展示します。
その作品は、育った土地があってこそ出来た作品です。



籏 寿恵
1993年愛知県豊田市生まれ 愛知教育大学 造形文化コース卒業 愛知教大学大学院 教育学研究科芸術教育専攻 修了 現在、多治見市文化工房ギャラリーヴォイス勤務。

愛知教育大学へ進学し、ガラス、陶芸、金工、染織の中から専攻を絞っていく課程で、土を扱うことに一番親しみを覚え、やきものを選びました。
今の作品は、大学3年生の時に出された「手捻りとたたらで作品を作る」という課題で作ったものを元に制作しています。私は大学3年での制作で、思いきり土に触り、何も考えずに形を作っていくことの楽しさに目覚め、土の有機的な質感の面白さに魅かれました。
粘土という素材での制作は手で触ると、触ったままの形が出てくる所が魅力だと思っています。その触ったままの形を活かし自分らしい作品を作るのが、今の目標でもあります。



光岡 幸一
愛知県生まれ 東京藝術大学大学院油画科修了

元々は建築を学んでいたが、東京の下宿先から愛知の実家まで徒歩で帰った事をきっかけに人と直接関われるパフォーマンスに興味を持ち、制作をはじめる。
観察と対話によって場所の特性を見出して作品に取り込みつつ、地域の人やものと関わりながら制作を行う。
主なプロジェクトに、警察に撤去されそうになっていた上野のとあるホームレスのおじさんの壊れた台車を勝手に回収して治して返そうとした。など。



伊藤 正人
1983年愛知県豊田市出生、名古屋市出身。

美術作家として活動する傍らで小説や自主発行のフリーペーパーでエッセイ等を執筆。主な著作に、「アインソフの鳥」note house(2017)、「仲田の海」大愛知なるへそ新聞(2016)、「リュウズの言象」(2015-)など。
生まれてから二歳になるまで住んでいた平芝町の家がいまもまだ残っている。
少なくとも築四十年ほどになる平屋建ての古い官舎で、庭がずいぶん広かった。十数年まえにたずねたときには空き家になっていて、たまたま出会った向かいの家のおばさん(おばさんは赤ん坊だったころのわたしをおぼえていた)といっしょにその庭へ忍び込んだ。濡れ縁にすわって庭を眺めると、おだやかな秋の光につつまれた芝生が黄金色に輝いていた。住み心地のよさそうなところだと思った。いや、実際に二歳までそこに住んでいたのではあるが。昨年末にたずねたときは雑草が伸び放題でずいぶん荒れていたが、台所と思しき磨りガラス越しの窓辺に物が置いてあって、だれかが住んでいるような生活の気配がうっすらと漂っていた。



柄澤 健介
1987年 愛知県豊田市生まれ
2013年 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科彫刻専攻修了 

現在、主に木を素材に制作しているが、チェーンソーを使って木材を荒彫りしていると、木材の芯へ向かって内部を表出させているような感覚がある。結局それは彫られた時点で表面となりそのさらに奥に内部ができるのだが、内側の形に触れてみたいと思っている。彫ることで物質に空間が浸食し、彫刻の内側へと触覚が展開されていく。表皮(表面)を境に隔てられている関係を解体し、内と外を同時に且つ等価に形にできないか試みている。この展示では、見るともなく見ている風景に潜在するスケールを、彫刻という物質に還元し、再構築したいと思っている。



三瓶 玲奈
1992年愛知県生まれ2015年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業 2017年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画 修了

私は日常の中で印象に残った風景を描いています。風景が記憶に残る条件には、特徴のある光や風や音をはじめ、何かが起こった状況や体験など多くの可能性があります。

私が捉えたものは、光によって照らされた強い色であり、それを断片的に記憶された印象としての風景です。その印象としての風景は記憶のかぎり私の興味を惹き続け、その風景を知っているという感覚で私の視界を覆います。その風景がいつ、どこを示しているのかを知るために、私は様々な場所に訪れこの目で見ることを決めています。制作に関しても同じく、多くの風景の中を実際に歩くことによって再確認と再構築を行っています。
その中で一つ、気付いたことがあります。
過去に訪れたことがない場所においても、過去に使った色で、さらに同じプロセスを使った表現がしばし繰り返されるという事実です。
私は仮説を立てました。強い印象の元を辿り、意識して歩き続けるのであれば、その行為自体が自分自身の持つ原風景そのものをかたちづくり、対峙を可能にするというものです。
私は、私の中の一番古い印象の記憶を知りたいと思っています。
光の風景が印象に残る要因を自身の経験をもって特定し、そして、その光の景色を他者と記憶の共有としてキャンバスに留めることができるのであれば、自分自身だけでなく、絵を見る人が求める光にもコンタクトできるかもしれないと考えるからです。私は光の風景を求め、風景の中を歩き、今日も絵に向かいます。



SENSORIAL DRIVE – ヒトと車の共感覚 – MUSIFY
豊田駅前ロータリー・とよたEcoful town・豊田市美術館

https://musify.jp/

今回とよたデカスに採択されたことがきっかけで、豊田市の色々な場所に足を運び、たくさんの方々と接する機会を得るようになりました。豊田市には、明るい勢いのある方々が多いように感じます。私にとっては初めて愛知県内のコミュニティに関わっていくことができたことを大変嬉しく思っています。(野口)
豊田市内で展示をすることで、自動車産業に関わる方々にも数多く観ていただけることが予想されます。それはエンジニアにとっては、大きな挑戦です。今後の糧となるフィードバックが得られることを期待しています。(永井)
今回、とよたデカスプロジェクトに採択されたことがきっかけで製作を始めたこの作品ですが、来年は、居住地である長久手市をはじめ、名古屋、東京でも展示の機会を持てたらと思っています。
今回出品するEVは、10年前に製作した1号機をベースに大幅な改造を施した ”3号機"になります。次の4号機は、まったくのゼロからまた改めて製作してみたいと思っています。 また、私たちは二人とも福祉に興味があるので、様々なむずかしさを抱えた人をサポートできるようなデバイスの製作もしていきたいと考えています。人々を分断するのではなく人々をつなぐことに、芸術や技術の力を使っていきたいです。(野口)






-Road of Cannes! 2- NegaPosi FILM
11月9日(土)[映画祭]豊田市福祉センター

https://negaposi-design.jimdo.com/

ROAD OF CANNES!とグローバルなタイトルを挙げていますが目的は地方にクリエーティブな生態系を創りたい!というスーパーローカルプロジェクトです。
数年前に豊田市で市民から寄付を募り有名監督が映画を制作。しかし、撮影が終わると監督、役者、スタッフも東京に戻り残念ながら地方には制作のノウハウ等未来に繋がるものは残りません。
このプロジェクトのキッカケの一つに老いた母の言葉がありました。
「もう歳なんだから畑を耕さないで!」と私。
「耕さないと土が死ぬ」とは母の言葉。
そう、よく言われる「文化不毛の地」も同じ。土を耕さない限り永遠に不毛が続きます。
地方に多くの監督、多くの作品を生み出す土壌が出来れば、脚本、役者、音楽、CGなど様々な才能に多くのチャンスが生まれ、クリエーティブな生態系が生まれます!このプロジェクトは「まちおこし」と「まちの掘り起こし」の二つの両輪を廻す前例の無い市民発信のプロジェクトです。
「映画制作」と「映画制作ワークショップ」そして「とよたいかんぬ映画祭」3つの鍬で地域のクリエイティブを耕し、地方創生の映画制作の文化を創りたいと考えています。
いつの日か、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩く監督が、この地から生まれる事を目指して。





-とよたハックキャンプ・variable form展-MOBIUM
http://www.mobium.org/toyota_hack_camp/

今回の企画「とよたハックキャンプ」は豊田市の小原地区を中心に、移動型ラボ「MOBIUM」を使って参加者と共にフィールドワークを行い、現地を観察することで発想を得て作品を作る、というプロジェクトです。小原地区は以前から興味があったので、今回調査やワークショップを行うことができてよかったということと、今回デカスプロジェクトに参加することで、手助けやアドバイスをいただける他のチームや、地域の方と出会えることができ、参加できてよかったです。特に小原在住の作家の安藤さんにはとてもお世話になりました。
現地の資源ということで、特に小原和紙を使って異素材との組み合わせや、皮の代用として和紙を使った行灯太鼓を制作するなど、一定の成果は上がったかと思います。
ただ、今年はワークショップから展示までの期間が非常に短かったため、まだまだ調査や地元の方との交流が足りないと感じましたので今後も長い目でプロジェクトを続けられたらと考えています。
7~8月に実施した小原でのワークショップの成果展を旧豊田東高校で10/14まで開催しています。その後は10/20にも小原交流館で今回の展示と和紙で太鼓を作るワークショップを行います。
以前にも岐阜県の根尾という地域で同じような活動を行なっているのですが、バスごと工房がやってきて、ワークショップや展示を行うことができるので、さまざまな場所で展開できるかと思います。
今回の経験をもとに、別の地区や県内外でも活動を広げられればと考えています。

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【インタビュー】とよたとアーティストたちインタビューその3「中崎 透」(2019.10掲載)

9月に旧豊田東高校で地元アーティストらを集めた展覧会「としのこえ、とちのうた。」を企画した中崎透さん。

とよたの人々と関わりながらアートプロジェクトを進めてきた中崎さんに今回の展覧会について伺いました。

「としのこえ、とちのうた。」
2017年から、とよた市民アートプロジェクト「Recasting Club」では、旧豊田東高校(以下:東高)の一角を少しずつ整備しつついくつかのイベントを開催してきた。なかなかハードな場所で、最初は、電気は発電機、水は美術館から数十メートルくらいホースで引っ張り、トイレは仮設だったり。最初は、と言ってみたものの、実は今もそんなに変わってない。どうやらあいちトリエンナーレの会場の一つになるらしいし、会期に併せて何かやりたいな、と思っていた矢先に、敷地内でこれまで見逃していた奥まったエリアがあった。当然のことながら廃墟だ。でもなんだか想像力を掻き立てられる佇まいの一角だった。
まずはRecasting Clubに参加する個性的な面々のグループ展をしたいなと思った。あと、1月に開催されたトリエンナーレの地域展開事業に出品されていた荒木優光の豊田で制作した作品がとびきり素敵で、連なる展示室に散りばめられたら素敵だなと思った。この2年半ほど豊田に通う中で参加者の顔や街、背景のことが少しずつ見えてきたのもあって、豊田に所縁のある人に出品してもらいつつ、それぞれのインタビューを録らせてもらって作品と共に  その言葉も展示させてもらおうと思った。土地や街に根ざした作品や言葉、声や歌の響いて交差するような空間がなんだかこの場所にとても似合うような気 がした。

中崎 透
1976年茨城県生まれ。美術家。
Nadegata Instant Partyの一人としてとよた市民アートプロジェクトのディレクターを務める。

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【インタビュー】とよたとアーティストたちインタビューその2「安藤卓児」「山岸大祐」(2019.10掲載)

とよた市民アートプロジェクト「Recasting Club」のメンバーであり、豊田市小原地区に住みながらマルチな活躍をする安藤卓児さん。
同じく「Recasting Club」のメンバーで、さらに「とよたデカスプロジェクト2019」で大賞を受賞した「アートデイズとよた」を企画した陶芸家の山岸大祐さん。
そんなお二人に豊田市での活動についての「これまで」と「これから」をお話いただきました。

安藤卓児
TAP 今回「としのこえ、とちのうた。」に参加されていかがですか。
-これまで、Recasting clubでの活動ではインスタレーションや、参加型の作品を作ってきましたが、本当はペインターなんです。今回のキュレーションのために中崎さんが僕のアトリエに来てくれて、色々な種類の絵がある中で、第三者的視点で掘り下げてくれました。それによって僕自身も自分のことを振り返りながら、今までの歩みを客観的に見る事ができました。
この中だと、2008年の作品が一番古いです。この作品は豊田市美術館で売っていた同館所蔵のクリムト作品のポスターを買ってきて、ステッカーを貼ったり、上からペイントなどを施して完成しました。随分過去の作品なので正直出展するつもりは全くなかったのですが、いま豊田市美術館クリムト展が開催していて、中崎さんが出そうと言ってくれた事で出展する事になりました。
僕の制作の姿勢は、ストリートカルチャーの影響を受けています。例えばこの作品では、クリムトという権威を安易に賛美してそのまま受け入れるのではなく、その偉大さを認めながらも挑戦し、新しく塗り替えていこうとする姿勢、哲学は今でも大切に持ち続けていて、改めて見ると、自分のマインドがよく表れている作品かなと思います。
抽象絵画もいろんな作品と並行して制作していますし、キャラクターを中心に描いていたり。あとはニューヨーク帰りの時に制作した作品はその時の刺激が現れていたりとか。結構赤裸々にいろんな時代の作品を公開しています。

TAP 年代もテーマもかなりバラエティがありますね!
-スタイルが絶えず変化する、という自覚はあります。決まり事を大事にして制作をしていくよりも、その時の瞬間的な思いや純粋な衝動を大事にするようにしています。構想や実験には日々時間を費やしていますが、絵も音楽も最終的には、ほぼ即興的に制作します。

TAP 豊田市での活動することに対しての思いや、これからの展望について教えてください。
-やはり豊田市は自分の生まれ育った街なので愛着があります。もっとも若い頃は不満ばかりに目がいってましたが、外に出てみて沢山の良い点にも目がいくようになり、様々な活動を通して実際に自分や家族が住む街としての豊田市を自分達の手で良くしていけるという実感が現在はあります。発展途上の新しい街だからこそ可能性に溢れており、他の大都市とは違った方向へと進化していける事に可能性を感じており、市民発信でアートのある街づくりを実現していけたらと思っています。
これからの展望は、国際的なアーティストとしての活動を海外でもより活発化させながらも、今半分住んでいる豊田市小原地区の自然と共存できるくらしを学びや実践を発展させていき、いずれは両者を交差させる試みにチャレンジしていきたいと思っています。田舎から世界へ。世界から田舎へ。といったイメージでしょうか。

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山岸大祐
TAP リキャスティングクラブ参加へのきっかけは?
-最初のきっかけは知人がリキャスティングクラブという活動が始まるんだよと教えてくれた事です。それでリキャスティングクラブには最初の説明会から参加していました。
リキャスティングクラブの第1回目のイベント(On Stage ! On High School)では旧東高の武道館で色々な屋台が並ぶ中、小皿作りの体験ワークショップをやりました。具体的なメンバー活動としての始まりはそこで、出来る時はなるべく参加してます。

TAP 今年はデカスでの活動もされていますね!
-以前はデカスに応募するというビジョンは持っていたわけではないです。ただ、学芸員資格をとっていたりで、将来キュレーションをしたいという思いは学生の時から持っていました。

TAP 豊田市での活動に対しての思いを教えてください。
-アートデイズには豊田市出身のアーティストが出展しています。豊田市民の方には、作家が豊田市出身という事をひとつの鑑賞のきっかけにして、そこからアートに興味を持っていただけると嬉しいです。アートがもっと気軽になる状況が豊田市全体に根付いていったら嬉しいですね。
また、若者が豊田でも何か出来るんじゃないかと思える様に活動していきたいです。
芸術に積極的に関わる豊田市の若者は活動の場を求めて、他の地域を目指していると感じています。実際に僕も今まで全国展や海外での発表に目を向けて制作して来ました。
僕は白水ロコさんがデカスで採択されたオープンスタジオ企画への参加依頼がK-TENの先輩経由できて、それに参加したことで市役所のルミアールプロジェクトに参加して、そこら辺がきっかけで市内の活動に関わろうと思うようになって、リキャスが始まり参加しました。

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【インタビュー】とよたとアーティストたちインタビューその1「逸見ルチカ」「小野寺のどか」(2019.10掲載)

アーティストってどんな人でしょう?自分の作品が美術館に飾られたらアーティスト?何かを作りだしたらアーティスト?芸術家とアーティストって違うの?あなたの身近にアーティストはいますか?

今月の特集テーマは「とよたとアーティスト」。とよたで活動中やとよたゆかりのアーティストたちにスポットをあてます。

逸見ルチカ インタビュー
今月号のTAP MAGAZINEの素敵な表紙を描いてくれたのは、豊田市在住のアーティスト、逸見ルチカさん。ルーブル美術館に展示されたこともある彼女にとって「とよたで活動すること」「絵を描くってどんなこと」?

TAP 豊田市で活動することに対しての思いはありますか?
-展覧会をすることが増えて、色々な人に絵を見てもらうことも増えました。私の絵を見た豊田市の方に優しい声をかけてもらったりもしました。豊田市での活動はそういう優しい人達への恩返しの思いもあります。

TAP 今回のHYBEIDBUNKASAIⅡでの展示はコラージュや立体など色々な作品がありますね!特に思い出のある作品はありますか?
-乗っていた自転車がパンクしてしまったのがショックで、その時の自転車を作品にして今回展示しました。
あと小学3年の時のコンテストで「ぜったい入賞してやる!」と思って書いた作品が落ちちゃって…とても悔しかったです。その作品はすごく思い出があります。(ちなみに表紙の作品です!)

TAP 作品のキャプションが物語になっているものがありますね。どんなときに絵を描いていますか?
-普段からふと筆を持って絵を描きたくなります!ハッピーな気持ちのときが多いです。いろんな色を重ねたり、色を楽しんでるうちに、その絵のテーマだったり物語が生まれてきます。

TAP 絵を描くこと以外には、どんなことをして過ごしていますか?
-今は豊田市の山の中に暮らしていて、ゆったり過ごしています。庭で、パパがつくったブランコで遊んだりバスケをしたり。本を読むことも好きで、伝記漫画とか最近は小説にも挑戦しています。
でもやっぱり絵を描いてるときが一番多いです!

逸見ルチカ
2008年 岡崎市生まれ 豊田市旭地区在住

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小田原のどか インタビュー
あいちトリエンナーレ2019 豊田会場を盛り上げてくださった参加作家の小田原のどかさん。「豊田市での展示について」「作品を作るときに欠かせないもの」「子供の頃について」を伺いました。

TAP あなたの作品が豊田市で展示されることにどのような意義を感じていらっしゃいますか?
-私の作品は、彫刻や銅像や記念碑について、それらが社会から必要とされるのはどうしてなのだろうという疑問を可視化する内容です。
愛知は長久手桶狭間などの古戦場があり記念碑文化の成立と関わりが深い場所ですが、とくに豊田市で毎年3月に開催されている「顕彰祭」は銅像が活用されている日本でもとても珍しいお祭りのひとつです。
今回の作品は豊田市の歴史や文化に直接的に関わるものではありませんが、そういった愛知や豊田のもつ記念碑文との深いつながりが、作品に深みを与えてくれたと考えています。

TAP 作品を作るときに欠かせないものはなんですか?
-パソコンと紙とペンと国会図書館です。
調べ物をすることも私の作品制作の大切な要素なので、国会図書館などで先行研究に当たることは欠かせません。

TAP 子供の頃はどんなお子さんでしたか?
-3歳の頃から自分が着る洋服はすべて自分でコーディネートしていたそうです。次の日に着るお洋服を枕元に畳んで置いてから寝ることが習慣だったと聞いています。

小田原のどか
1985年 生まれ 宮城県出身東京都拠点
あいちトリエンナーレ2019 豊田会場にて名鉄豊田市駅下と新とよパークで展示

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【ダイアローグ】「特別企画 HYBRID BUNKASAIⅡの会場からレポート&トーク」(2019.10掲載)

TAPポータルサイトでは、毎月1つテーマを設定して、「この人」対談、インタビュー、レポート、コラムなどを集中して掲載していきます。

2019年10月のテーマは「とよたとアーティストたち」。インタビューやコラムなど様々なコンテンツを掲載します。
特集のメインコンテンツは、TAPの先駆事業<TAG>からの継承企画、石黒秀和・清水雅人がとよたの文化芸術に関するキーマンと対談する「この人」です。
様々なお話を伺った模様を動画撮影、基本的にノーカットで公開します。
また、対談を要約した文字コンテンツも掲載します。

今月の「この人」は特別企画として、10月5日6日13日に旧豊田東高校で開催したHYBRID BUNKASAMⅡ(ハイブリッドブンカサイ2)会場より、展示等の映像レポートとトークでお届けします。

特別企画 HYBRID BUNKASAIⅡの会場からレポート&トーク
https://youtu.be/2cpXd8WwpY8


要約文字コンテンツ(文責:清水雅人)
今回は映像の最後部分、石黒と清水のトーク部分のみの文字起こしとなります。

HYBRID BUNKASAIⅡについて
清水「3日間の開催の最後にトーク収録してますが、3日間通しての率直な感想はいかがですか?」
石黒「ハイブリッドブンカサイは昨年に続いて2回目でしたけど、今年の方が出展者数も多いし、前回使ってなかったスペースもほぼ使ってますし、規模としては昨年よりも大きくなったと思います。また、ここはあいちトリエンナーレの会場の1つでもありますし、豊田市美術館で開催のクリムト展、大変盛況なんですが、その臨時駐車場にもなっていて、クリムト展を観がてらこちらにも来られた方もいると思うので、昨年とくらべるとかなり違った雰囲気、慌ただしさもあったのかなと思います。それでも、このアートイベントのまったり感、カオス感というのも健在で、豊田でこういうアートイベントが2回やれたというのは、これからに繋がっていくのかなと思っています」
清水「基本的には現代アート、現代的なテーマを持った展示やパフォーマンスだったんですが、前回とくらべても、大分なじんできたというか、こなれてきたというのが正直な感想ですね。今回レポート用にぐるっと撮影しましたが、廃校っていうのはどこでも画になるというか、いいんですよね、みなさんもそのスペースをうまく使っているというか」
石黒「やっぱり場所があるというのは大きいですよね、発信表現する・作り上げていくのに場所というのは重要なんだなと改めて感じました」
清水「日本で10代を過ごした人なら感じる学校という空間に対する郷愁、でももう使われてない廃校という現実、そこに存在する現代アートという日常と非日常が交じり合ってなんとも言えない感情を作りだすというか。参加したアーティストもイマジネーションを掻き立てられる場所だったのかなと」
石黒「お客さんも、ここに来るだけで何かを感じられる場所だったと思います」
清水「クリムト展を観に来たついでに寄ってくれた人も多かったと思いますが、そういう人の声をもっと拾いたかったなとも思います。今回アーティストの話はちょっと聞いたんですけど、お客さんにはインタビューしなかったので。でも、漏れ聞こえてきた声では、この場所とともに現代アートを楽しんでくれているなと。また、今回市内のアーティストの参加も多かったということで、まずはそういう作家さんたちを知れたのも大きいですね」
石黒「そういう作家さんが豊田を自分のまちとしてどう関わってくれるか、イベントなどを立ち上げていってくれるかにかかっていると思うので、本当にこれからですね」
清水「まあずぅーと言ってることですけど、アーティスト・作家はいるけどそれをプロデュースする人材も必要で、デカスプロジェクトなんかはそういう人材を育てていく事業だと思いますが、このハイブリッドブンカサイもたどれは市の事業ですけどずっと市が主導していくわけにもいかないので、そういう人材も同時に出てこないといけないというのは今後の課題として言っておかないといけないと思います」

(中略)

あいちトリエンナーレも終幕
清水「8月から開催して明日閉幕となるあいちトリエンナーレ全体の感想、総括もしとかないとと思うんですが。客観的に言うと、豊田会場の来場者数も目標をかなり上回ったらしいですし、まずはその点では成功だったと思いますが」
石黒「まあ、よくも悪くも『表現の不自由展、その後』の件があって話題になって、開催前はトリエンナーレ知らないという人も結構いたと思いますが、あの一件で少なくともトリエンナーレという言葉は広く知られましたよね。終始表現の不自由展の話題に引っ張られてしまったという印象もはありますが、良し悪しあるにせよ記憶に残る芸術祭になったとは思います」
清水「『表現の不自由展、その後』についていえば、最後1週間だけ展示を再開しました、まったくなかったことのようにしてしまうよりは意味があったのかなと思います。表現の自由というのは紛れもなく普遍的な、民主主義においても重要な問題ですしそれについて語ることをタブーとしないで議論を続けていくことが重要だと思います」
石黒「そうですね、表現の自由について考える元年になったんじゃないかと思いますね」
清水「それにしても文化庁があいちトリエンナーレへの補助金をカットするというのは考えられないというか、なめられているというか、怒らないといけないですね私たちも。見せしめとしてやってるとしか思えませんし、実際は地方のことなんか全然考えてないという政治家や官僚のホンネが出ちゃったというか」
石黒「色々意見はあっていいとは思いますが、私もこの件についてはありえないと思いますね」

これから
清水「次回のあいちトリエンナーレで豊田が会場になるかどうかはわかりませんが、豊田のアートのこれからとしてもいい機会になったんじゃないかと思います。豊田市としては大きなイベント、ラグビーワールドカップとあいちトリエンナーレが終わりました。とよたアートプログラムも立ち上がりましたがTAPマガジンは11月号で終了、またここ旧豊田東高校でのイベントも今回が最後、来年度には取り壊されて豊田市博物館の建設に入っていくということで、ちょうど一区切り、ポストトリエンナーレポストワールドカップを考えていかないといけないと思いますが、いよいよここからかな、いよいよ本当のスタートかなと思います」
石黒「そうですね、トリエンナーレもハイブリッドブンカサイもお祭り、一過性のイベントですから、この後が大事だと思います」

ホストプロフィール:
石黒秀和(いしぐろひでかず)
脚本家・演出家。豊田市出身。高校卒業後、富良野塾にて倉本聰氏に師事。豊田に帰郷後、豊田市民創作劇場、豊田市民野外劇等の作・演出、とよた演劇アカデミー発起人(現アドバイザー)ほか、多数の事業・演劇作演出を手掛ける。TOCToyota Original Company)代表、とよた演劇協会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員長。
ホーム - とよた演劇協会

清水雅人(しみずまさと)
映像作家・プロデュ―サ―。豊田市出身・在住。豊田市役所職員時代に市役所内に映画クラブを結成し、30歳の頃より映画製作を開始。映画製作団体M.I.F.設立、小坂本町一丁目映画祭主宰。2013年市役所を退職、独立し、映像制作、イベント企画、豊田ご当地アイドルStar☆T(スタート)プロデュースなどを手掛ける。豊田星プロ代表。映画「星めぐりの町」を実現する会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員。
豊田ご当地アイドルStar☆Tオフィシャルサイト

【コラム】豊田現在演劇マップ/清水雅人(2019.9掲載)

今月(2019.9)の特集テーマは「豊田の演劇」。「この人」対談やコラムで豊田の演劇界は現在活況になりつつあるとの評価は誰もが認めるところだろう。

ということで、現在豊田市内で継続的な活動や定期的な公演を行っている劇団、演劇グループなどを紹介したい。観劇、演劇に興味のある方の参加等の参考にしていただきたい。

豊田で現在活動しているもっとも老舗の劇団は、劇団ドラマスタジオである。
2000年、長年豊田の演劇界をけん引してきた岡田隆弘(演出家)と柴田槇子(役者)を中心に、当時毎年開催されていたとよた市民創作劇(1992年~2001年 豊田市文化協会~豊田市文化振興財団主管)の常連メンバーにより劇団設立された。
現在も春秋の年2回公演を継続しており、今年(2019年)6月には25回公演を上演した。
基本は既発表の演劇脚本による公演を行っている。
サイト https://gdramastudio.wixsite.com/dramastudio
フェイスブックページ https://www.facebook.com/dramastudio.g/

いや、活動歴が長いのはこちら、劇団・笑劇派
1998年、南平晃良を中心に設立。長年、お笑い劇団として喜劇や啓発劇を上演。本公演のほか豊田市内~全国の学校や公共施設等での啓発劇、豊田市平戸橋町に構える事務所での公演など精力的に活動している。テレビやラジオ出演も多数。設立当時より地元拠点、お笑い劇をブレることなく続けるパイオニアだ。
サイト https://www.showgekiha.com/

続いて紹介するのは、とよた演劇アカデミー(2008年~2017年 豊田市文化振興財団主管)修了生を中心に設立された劇団。
劇団カレイドスコープ
演劇アカデミー1期生を中心に設立 喜楽亭(豊田産業文化センター敷地内古民家)にて年1回本公演上演(2016年~)
他に交流館や施設等での出張公演も行っている。
フェイスブックページ https://www.facebook.com/KIRAKUTAI.LOVE/
ツイッター https://twitter.com/KALEIDOSCOPE_tc
ひつじの森のよつば村
演劇アカデミー4期生を中心に設立
フェイスブックページ https://www.facebook.com/hitujinomorinoyotubamura/
劇団栞ちゃんのしおり
演劇アカデミー9期生を中心に設立 HYBRID BUNKASAIでの公演、TPAC(とよた大衆芸術センター)での公演等精力的に活動中
サイト https://siorisiori.jimdo.com/
ツイッター https://twitter.com/toyota_engeki_9
TEAM 10+(ちーむてんぷら)
演劇アカデミー10期生を中心に設立 第3回とよた演劇祭にて短編上映
ツイッター https://twitter.com/TEAM_10pura

とよた演劇アカデミー修了生の内の有志を中心に実行委員会形式とよた演劇祭が2016年より毎年開催されている。
第4回となる今年は11/30、12/1に「景を切りとる舞台」と題して応募出演者みんなで舞台を創作する公演になるようだ(募集は終了)。
サイト https://toyotaengekisai.jimdo.com/
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古場ペンチ主宰による演劇ユニットPinch番地も目が離せない。豊田にとどまらず名古屋はじめとする市外公演も積極的に行い、昨年(2018年)名古屋のナビロフトにて「カノジョまでの距離、そのあらゆる線分の長さ」を上演、古場ペンチ個人の市外劇団への客演も多数。古場ペンチは前述のとよた演劇祭の運営、演出等も行っている。
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とよた演劇アカデミーの後継事業としてとよた演劇ファクトリー豊田市文化振興財団)が2018年より行われている(本年度2期生修習中)。名古屋の実力派劇団あおきりみかん主宰の鹿目由紀氏をプログラムディレクターに迎え、演出コース・役者コースに分かれ1年を通して演劇に関する講義と舞台上演を行っている。

小学4年生~中学3年生が参加、名古屋の実力派劇団あおきりみかん主催の鹿目由紀氏が指導・監修するとよたこども創造劇場豊田市文化振興財団主管)は今年で9年目(2011年~)となる。毎年度当初に参加者を募集し、11月に公演を行っている。今年は11月3日に豊田市民文化会館にて開催予定。

今月の動画コーナー「この人」でも多く語ってもらっている石黒秀和氏は、近年は様々な場所/スペースでの公演、気軽に参加できる演劇の試行としての朗読劇などのプロデュ―ス/作演出を精力的に行っている。
今年10/13にはHYBRID BUNKASAIⅡにて群読劇 ギリシャ悲劇「オイディプス王」をプロデュ―ス/作演出する。
Recasting Club丨リキャスティング・クラブ

とよた演劇協会 とよたの演劇人のサポート、演劇公演支援、情報共有共同体等として、石黒秀和を会長とし2017年設立。随時会員募集中
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他にも、小原をはじめ農村舞台等で公演する地歌舞伎団体や、各地域・交流館等を拠点に活動する人形劇団・演劇サークル等も存在するが今回はそこまでカバーしていないので、ご了承ください。

清水雅人(しみずまさと)
映像作家・プロデュ―サ―。豊田市出身・在住。豊田市役所職員時代に市役所内に映画クラブを結成し、30歳の頃より映画製作を開始。映画製作団体M.I.F.設立、小坂本町一丁目映画祭主宰。2013年市役所を退職、独立し、映像制作、イベント企画、豊田ご当地アイドルStar☆T(スタート)プロデュースなどを手掛ける。豊田星プロ代表。映画「星めぐりの町」を実現する会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員。

【コラム・演劇】豊田の演劇、過去 今 未来/石黒秀和(2019.9掲載)

豊田の演劇史については、TAP(Toyota Art Program)のサイト(
https://tap.hatenablog.jp/entry/2019/09/25/105557 )に、2016年7月に岡田隆弘氏に聞いた映像とコラムが載っているので、興味のある方はそちらをご覧いただくとして、2003年と2006年に全市規模で行った「とよた市民野外劇」以降、豊田の演劇事情はそれなりに活況ではないかと思っている。

しかしなにをもって活況というかは、人それぞれだし、なによりもともと小さな世界の話。客観的な判断はなかなか難しい。それでも、2008年に始まった「とよた演劇アカデミー」とそれに続く「とよた演劇ファクトリー」、また2011年に始まった「とよたこども創造劇場」の一連の人材育成事業により、多くの演劇人材が輩出されたのは確かであり、その中から劇団カレイドスコープをはじめ多くの劇団が誕生し、有志による自主企画としての「短編演劇フェスティバルT-1」や「とよた演劇祭」が生まれ、2017年には「とよた演劇協会」が設立された。市内で演劇に関する公演を観られる機会は10年前の倍近くになったのではないか。

毎日市内のどこかで演劇の稽古が行われている。

とよた演劇ファクトリーやとよたこども創造劇場の指導者でもある鹿目由紀氏の存在も大きい。いい指導者のもとではいい選手が育つ。スポーツに限ったことではない。

鹿目氏は、昨年から役者だけではなく演出家の育成にも乗り出し、また、子どもを対象にした戯曲講座も開催してくれている。

もちろん、豊田の演劇事情はそれに限ったものではない。

山間部を中心に地歌舞伎なども盛んなため、あえてここは現代演劇に絞って話をするが、豊田市は中学校区に一つ交流館があり、そこでは子育てや高齢者の生きがいづくり、あるいは防犯などをテーマにした自主サークル的な劇団が活動している。

また、おやこ劇場や文化振興財団主催の興行的な公演も年間を通して上演されているし、近年は名古屋の人気劇団「ハラプロジェクト」や「劇団あおきりみかん」の公演もホールだけではなく農村舞台などでも行われている。

あいちトリエンナーレ2019の公式プログラムとして、豊田市民文化会館大ホールの舞台上舞台で上演される「幸福はだれにくる」は、現代演劇の魅力をさらに多くの人に届けてくれるだろう。

さて、ここまで書くとなんとも豊田の演劇事情は未来に向け明るいことばかりのようだが、もちろんそんなわけはなく、見方考え方で一変する。例えばこの10年で市内に劇団は確かにたくさん生まれたが、では定期公演を行っている劇団は幾つあるかと問われれば、約20年前、「豊田市民創作劇場」から生まれた「劇団ドラマスタジオ」ただ一つである。

そもそも豊田の演劇は、このドラマスタジオの主宰でもある岡田隆弘氏がこの50年以上をたった一人で背負ってきたと言っても過言ではない。演劇とは、かくも続けるのが難しいものなのである。

また演劇の質もよく問われる。外からわざわざ観に来たくなるような作品や劇団が豊田にはないとは昔も今も言われることだが、それは集客の問題にもつながっている。いまだ集客のほとんどは劇団員の手売りによる。それでは劇団員の負担も増すし、なにより観客、創り手双方の向上につながらない。観客の批評眼が創り手や作品を育て、それがまた観客を育てる。それが今はほとんどない。

そして、劇場の問題である。この街には、小劇場がない。

今更ハードかと言われそうだが、演劇(あるいは舞台芸術)の振興のためには小劇場の存在は不可欠だと思っている。立派なものは必要ない。小さな空き倉庫をブラックボックスとして改装するだけでいいのだが……。

最後に、私事だが、今年、演劇部をつくった。まったく私的な、大人の部活動である。とりあえず40歳以上の、おっさんばかり7名ほどが月1回程度平日夜に活動している。楽しみながら、いかに社会人として持続可能な演劇を続けるか、それも高い質を目指して。そんな新たな挑戦の場だとも思っている。

石黒秀和(いしぐろひでかず)
脚本家・演出家。豊田市出身。高校卒業後、富良野塾にて倉本聰氏に師事。豊田に帰郷後、豊田市民創作劇場、豊田市民野外劇等の作・演出、とよた演劇アカデミー発起人(現アドバイザー)ほか、多数の事業・演劇作演出を手掛ける。TOCToyota Original Company)代表、とよた演劇協会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員長。