2021年11月16日火曜日

【コラム】「続ける」石黒秀和(2021.10)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/


 1993年から9年間、豊田文化協会(現在の豊田市文化振興財団文化事業課)が主催していた豊田市民創作劇場というものに関わっていた。キャスト、スタッフ全て市民から公募、約半年をかけてオリジナル劇を上演、そんな企画に、僕は第2回目から脚本・演出として関わった。きっかけは、1992年に上演された第1回目の公演を妹と観に行き、その際、妹が公演アンケートに自分の兄が富良野塾出身であることを書いたことにある。ある日電話がかかってきて、次回作の脚本を書いてくれないかと依頼を受けた。当時は半年後に富良野塾の全国公演にスタッフとして参加することが決まっていて、その後は東京に出たいと思っていたので、今回限りで脚本だけならとお引き受けし、富良野塾時代に書き溜めた短編を連ねた「ファイト」というオムニバス作品を書き上げた。しかし書き上げるとやっぱりなんだか演出もしたくなり、結局最初の2カ月間だけ演出もした。その後の4カ月と本番は知らない。帰ってくると、公演は大成功で再演の話まであることを聞いた。そうしてその年の冬、「ファイト」はクリスマスバージョンとしてアンコール公演を行った。カーテンコールの中、僕は初めて、自分の作品に対するお客さんの拍手と、共に創り上げたキャスト、スタッフの笑顔と涙を見、みんなと、次はなにを創ろうかと考えていた。おそらく、あの時、僕の人生は決まったのである。あれから約25年、僕はこの地で、芝居を創り続けている。

 夢は当然、東京でシナリオライターになることだった。東京で、は、成功の絶対条件だった。地元で、舞台中心に、サラリーマンをしながら脚本だけじゃなく演出やプロデュース、まちづくりにまで関わるとは思ってもみなかった。果たして、これは夢破れたのか? 

 豊田市民創作劇場からは実は何人かの若者が役者を目指し富良野塾に入った。また、富良野塾には落ちたが夢を追い東京に旅立った者もいる。しかしその多くが今は役者を辞めている。それでも、東京で、約20年、バイトをしながら、いまも役者を続けている者がいる。僕は役者やライターになるための才能はなんですか? と聞かれたら、今は迷いなく「続けることです」と言う。これは実感である。僕の知る夢叶えた人は皆、とにかく続けた人だ。続けることはまさに才能なのだと思う。ただ、一方で、これはとっても残酷な言葉でもある。「もういいよ、他にも道はあるんだ、人生は一つじゃないんだ」。この言葉も、決して間違いではない。では、果たして、「続ける」とは、一体なにを続けることなのだろうか?

 東京で、売れっ子のシナリオライターになる。それを成し遂げた時、僕は夢を叶えたことになる。そんな気持ちは実は今もある。まだ可能だとどこかで思ってもいる。一方で、シナリオライターになりたいと思ったその理由、あの時の気持ち、それを叶える方法は、実は一つじゃなかったことを、今の僕は知っている。しかし、果たして、それは妥協なのか?

 答えは分からない。でも、これからも、続けていきたいと思っている。


過去のコラムはこちら → http://toyotaartgene.com/column.html

石黒秀和(いしぐろひでかず)プロフィール
1989年に倉本聰氏の私塾・富良野塾にシナリオライター志望として入塾。卒塾後、カナダアルバータ州バンフに滞在し、帰国後、富良野塾の舞台スタッフやフリーのシナリオライターとして活動。1993年より9年間、豊田市民創作劇場の作・演出を担当する。
2003年、2006年には国内最大級の野外劇「とよた市民野外劇」の作・演出を担当。その後、人材育成の必要性を実感し、舞台芸術人材育成事業「とよた演劇アカデミー」(現在はとよた演劇ファクトリー)を発案、実行委員として運営に携わり、2011年から2015年まで短編演劇バトルT-1を主催する。
2012年からはTOCを主宰して市民公募のキャストによる群読劇を豊田市美術館などで上演。2017年からは、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員長として様々なアートプログラムの企画・運営に従事し、同年、とよた演劇協会を設立。会長に就任し、2020年、とよた劇場元気プロジェクトを実施する。
その他、演劇ワークショップの講師や人形劇団への脚本提供・演出、ラジオドラマ、自主短編映画製作など活動の幅は多様。これまでの作・演出作品は70本以上。1997年からは公益財団法人あすてのスタッフとして社会貢献事業の推進にも従事。豊田市文化芸術振興委員ほか就任中。平成8年度豊田文化奨励賞受賞。平成12年とよしん育英財団助成。平成27年愛銀文化助成。日本劇作家協会会員。

【ダイアローグ】<TAG>ダイアローグ12月号は、11/24に豊田カフェにて公開収録 とよた演劇祭の魅力トークショー行います

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/

豊田の演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>にて行っている豊田で活躍する人材をお招きしてお話を伺う<TAG>ダイアローグの12月号は、豊田市民文化会館内にオープンした豊田カフェ/オープンスペースにて公開収録します。
今月のゲストは、12月18・19日に開催する第6回とよた演劇祭『ものす舞台』に関わる方々をお招きして、とよた演劇祭や豊田の演劇界のお話を伺います。
ぜひ、会場にて生トークご観覧ください!

<TAG>ダイアローグ とよた演劇祭の魅力トークショー
【日時】11月24日(水)18:30開場 19:00開演(20:00頃終了予定)
【会場】豊田カフェ/オープンスペース(豊田市民文化会館内)
【出演】ゲスト:古場ペンチ・図師久美子 ほか(とよた演劇祭実行委員会) ホスト:石黒秀和・清水雅人
【入場料】観覧無料 ただし1ドリンク券(500円)購入が必要です
※<TAG>ダイアローグの動画は、後日<TAG>サイトにて公開されます。

豊田カフェサイト → http://toyotacafe-theater.com/
とよた演劇協会サイト → https://toyotaengekisai.jimdofree.com/


2021年9月29日水曜日

【ダイアローグ】<TAG>ダイアローグ特別編<TAG>放談生配信 アーカイブ動画公開(2021.9)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/

豊田で活躍する人材をお招きしてお話を伺う<TAG>ダイアローグ、月1回のペースで行っていますが、緊急事態宣言が延長されたこともあり9月はお休みとします。
ですが、その機会に、実験的な試みとして、ゲストはお招きせず、<TAG>発起人2人によるリモート生配信を行いました。
テーマは決めずに、近況、豊田の文化芸術界隈、想うことなどをざっくばらんに”放談”しました。
リアルタイム視聴でのチャットコメントもありがとうございました。
アーカイブとして、配信した動画はいつでも視聴できますので、興味のある方はどうぞ。

<TAG>ダイアローグ特別編 <TAG>放談生配信
【日時】9月28日(火)21:00~(約1時間15分)
【出演】石黒秀和、清水雅人 
配信動画 → https://youtu.be/zZIJHawBgYM

過去の動画/文字起こしはこちら → http://toyotaartgene.com/

<TAG>チャンネル登録もよろしくお願いします → https://www.youtube.com/channel/UCIjZssyxVzbc1yNkQSSW-Hg

※今回の生配信は文字起こしは行いません。どうぞご了承ください。

出演者プロフィール
石黒秀和(いしぐろひでかず)
 1989年に倉本聰氏の私塾・富良野塾にシナリオライター志望として入塾。卒塾後、カナダアルバータ州バンフに滞在し、帰国後、富良野塾の舞台スタッフやフリーのシナリオライターとして活動。1993年より9年間、豊田市民創作劇場の作・演出を担当する。
 2003年、2006年には国内最大級の野外劇「とよた市民野外劇」の作・演出を担当。その後、人材育成の必要性を実感し、舞台芸術人材育成事業「とよた演劇アカデミー」(現在はとよた演劇ファクトリー)を発案、実行委員として運営に携わり、2011年から2015年まで短編演劇バトルT-1を主催する。
 2012年からはTOCを主宰して市民公募のキャストによる群読劇を豊田市美術館などで上演。2017年からは、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員長として様々なアートプログラムの企画・運営に従事し、同年、とよた演劇協会を設立。会長に就任し、2020年、とよた劇場元気プロジェクトを実施する。
 その他、演劇ワークショップの講師や人形劇団への脚本提供・演出、ラジオドラマ、自主短編映画製作など活動の幅は多様。これまでの作・演出作品は70本以上。1997年からは公益財団法人あすてのスタッフとして社会貢献事業の推進にも従事。豊田市文化芸術振興委員ほか就任中。平成8年度豊田文化奨励賞受賞。平成12年とよしん育英財団助成。平成27年愛銀文化助成。日本劇作家協会会員。
とよた演劇協会 https://toyota-engeki.jimdofree.com/

清水雅人(しみずまさと)
 2000年頃より自主映画製作を始め、周辺の映画製作団体を統合してM.I.F(ミフ Mikawa Independet Movie Factory)を設立(2016年解散)。監督作「公務員探偵ホーリー2」「箱」などで国内の映画賞を多数受賞。また、全国の自主制作映画を上映する小坂本町一丁目映画祭を開催(2002~2015年に13回)。コミュニティFMにてラジオ番組パーソナリティ、CATVにて番組制作なども行う。
 2012年、サラリーマンを退職/独立し豊田星プロを起業。豊田ご当地アイドルStar☆T(すたーと)プロデユースをはじめ、映像制作、イベント企画などを行う。地元の音楽アーティストとの連携を深め、2017年より豊田市駅前GAZAビル南広場にて豊田市民音楽祭との共催による定期ライブToyota Citizen Music Park~豊田市民音楽広場~を開催。2018年2019年には夏フェス版として☆フェスを同会場にて開催、2,000人を動員。
 2016年、豊田では初の市内全域を舞台にした劇場公開作「星めぐりの町」(監督/黒土三男 主演/小林稔侍 2017年全国公開)を支援する団体 映画「星めぐりの町」を実現する会を設立し、制作、フィルムコミッションをサポート。2020年、団体名を「映画街人とよた」に改称し、2021年全国公開映画「僕と彼女とラリーと」支援ほか、豊田市における継続的な映画映像文化振興事業を行う。
 2017年より、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員就任(2020年度終了)、あいちトリエンナーレ関連事業の支援やとよたアートプログラム支援を行う。
豊田ご当地アイドルStar☆T http://star2t.com/
映画街人とよた http://eigamachibito-toyota.net/

2021年9月28日火曜日

【コラム】「上等な人生」石黒秀和(2021.9)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/


 〈人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇である〉と言ったのは確か喜劇王チャップリンだったと思うが、意味は少し違うかもしれないが、時代が経ち当時は大真面目だったことが今では喜劇となっていることがたくさんある気がする。例えば、モーレツ社員。24時間戦えますかと某栄養ドリンク片手に昼夜なく働くサラリーマンの姿はむしろ美徳だった。熱血指導。根性論で竹刀片手にうさぎ跳びを強要し、炎天下でも水も飲ませない部活動の姿はむしろ当たり前だった。いずれも昭和育ちの僕には身に覚えのあることばかりだが、しかし今その話を平成生まれにすると、憐れみを持って苦笑されるだけである。

 コロナ禍の今も、おそらく時代が経つと喜劇にしか思えない言動が日々繰り返されているのだろう。具体的事例はあえて避けるが、今や公共の場でパンツを脱いでも怒られないがマスクを外すと怒られると言っても嘘ではないような気がする。戦時中、竹やりで戦闘機に向かおうとした日本人を馬鹿だなぁと見ていた戦後生まれも、結局今同じような事をしているのかもしれない。

 時代の中で、本当に正しいことを見極めるのは至難の業である。そもそも正しいこととはなんなのか、それすら定かではない昨今である。不惑を過ぎたらブレない生き方をしたいと思っていたが、50歳を過ぎた今もその境地には到底達していない。情けないことではあるが、その情けなさを自覚するところまではなんとか来た気がする。

 富良野塾時代、喜劇を書く際に師匠に言われたことがある、それは、〈人を笑わせようと思って書いてはダメだ。どうしようもないことに直面した時、それでも必死に生きようとする人の姿を書きなさい〉。もはや後の世に褒められる人にはなれそうにない。ならばせめて笑われる人にはなってもいいのではないか。責められる人にはなりたくない。一生懸命やって、それでまぁしょうがない奴だったなぁと苦笑でもしてもらえたらなら、それはまぁ上等な人生ではないか、そんなことを思う今日この頃である。

過去のコラムはこちら → http://toyotaartgene.com/column.html

石黒秀和(いしぐろひでかず)プロフィール
1989年に倉本聰氏の私塾・富良野塾にシナリオライター志望として入塾。卒塾後、カナダアルバータ州バンフに滞在し、帰国後、富良野塾の舞台スタッフやフリーのシナリオライターとして活動。1993年より9年間、豊田市民創作劇場の作・演出を担当する。
2003年、2006年には国内最大級の野外劇「とよた市民野外劇」の作・演出を担当。その後、人材育成の必要性を実感し、舞台芸術人材育成事業「とよた演劇アカデミー」(現在はとよた演劇ファクトリー)を発案、実行委員として運営に携わり、2011年から2015年まで短編演劇バトルT-1を主催する。
2012年からはTOCを主宰して市民公募のキャストによる群読劇を豊田市美術館などで上演。2017年からは、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員長として様々なアートプログラムの企画・運営に従事し、同年、とよた演劇協会を設立。会長に就任し、2020年、とよた劇場元気プロジェクトを実施する。
その他、演劇ワークショップの講師や人形劇団への脚本提供・演出、ラジオドラマ、自主短編映画製作など活動の幅は多様。これまでの作・演出作品は70本以上。1997年からは公益財団法人あすてのスタッフとして社会貢献事業の推進にも従事。豊田市文化芸術振興委員ほか就任中。平成8年度豊田文化奨励賞受賞。平成12年とよしん育英財団助成。平成27年愛銀文化助成。日本劇作家協会会員。






【コラム】「“場”を創る」清水雅人(2021.9)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/


 コロナ禍によって、慣例や惰性で見えにくかった、物事の本質や人の本当の気持ち・考え方が露わになったことに多く出くわす。
 社会や組織が、このような非常事態でも、“まわる社会や組織”か“まわらない社会や組織”かの差も歴然とした。

 ウィズコロナとかポストコロナと言われ始めているが、当然すべてが元に戻るわけではない。
 例えば、普通の会議や打ち合わせはリモートになることによって、空気を読む必要がなくなり、意見もよく出て、会議が早く終わるようになったと聞く。
 だが、知恵を絞って、みんなで何かを作り上げるような話し合い、いわゆる“熟議”は、対面してやらないといいアイディアが出てこないとも聞く。
 出張や、視察や、なんとなくやっていたイベントや、、、は本当に必要なものだけに淘汰されるだろう。
 大学の講義のリモート化は、定員や立地という概念をなくし、新たなフェーズに入るという話もあるが、小中学校は、やはりリモートではダメで、それは学校が勉強するためだけにあるのではなく、友達を作り、他人と交わり、社会を学ぶところだからだ。
(そういえば、リモート飲み会というのも聞かなくなりました、、、)

 文化芸術は不要不急なのか?という議論を随分聞いた。日本という括りで言えば、ライブやフェスや公演や展示などは、欧米に比べれば、不要不急だと考える人が多いようだということもわかってきた。
 インターネットの発達によって、新しい様々な文化芸術の表現の方法が試されいることも確かだ。
 しかし、歌や踊りや演技や作品を、目の前で、生で観て感じること、みんなと一緒に体験することが、人にとって必要なことで、なくなることはないということもわかったと思う。
 はるか太古の人類の祖が、火を囲んで、木や石を叩いて音を出し、声を上げて歌い、踊り、洞窟の壁に絵を描いたことが文化芸術の興りだったように(※あくまでも清水仮説です)。

 私は、30歳になった時に映画作りを始めて30代を過ごし、42歳の時にサラリーマンを辞めて独立しご当地アイドルを10年かけて大きする40代を過ごした。50代は、地元の映画や音楽や演劇やアートに関する人々が集い、様々な表現を行う“場”を創ることをやっていきたいと思う。

 その足掛かりがまもなく始まる。みなさんと一緒にそんな“場”を創っていきたい。応援、ご支援、どうぞよろしくお願いします。

過去のコラムはこちら → http://toyotaartgene.com/column.html

清水雅人(しみずまさと)プロフィール
2000年頃より自主映画製作を始め、周辺の映画製作団体を統合してM.I.F(ミフ Mikawa Independet Movie Factory)を設立(2016年解散)。監督作「公務員探偵ホーリー2」「箱」などで国内の映画賞を多数受賞。また、全国の自主制作映画を上映する小坂本町一丁目映画祭を開催(2002~2015年に13回)。コミュニティFMにてラジオ番組パーソナリティ、CATVにて番組制作なども行う。
2012年、サラリーマンを退職/独立し豊田星プロを起業。豊田ご当地アイドルStar☆T(すたーと)プロデユースをはじめ、映像制作、イベント企画などを行う。地元の音楽アーティストとの連携を深め、2017年より豊田市駅前GAZAビル南広場にて豊田市民音楽祭との共催による定期ライブを開催。2018年2019年には夏フェス版として☆フェスを同会場にて開催、2,000人を動員。
2016年、豊田では初の市内全域を舞台にした劇場公開作「星めぐりの町」(監督/黒土三男 主演/小林稔侍 2017年全国公開)を支援する団体 映画「星めぐりの町」を実現する会を設立し、制作、フィルムコミッションをサポート。2020年、団体名を「映画街人とよた」に改称し、2021年全国公開映画「僕と彼女とラリーと」支援ほか、豊田市における継続的な映画映像文化振興事業を行う。
2017年より、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員就任し(2020年度終了)、あいちトリエンナーレ関連事業の支援やとよたアートプログラム支援を行う。


2021年9月20日月曜日

【ダイアローグ】9月は<TAG>ダイアローグ特別編 <TAG>放談生配信を行います 9/28(火)21:00~

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/

豊田で活躍する人材をお招きしてお話を伺う<TAG>ダイアローグ、月1回のペースで行っていますが、緊急事態宣言が延長されたこともあり9月はお休みとします。
ですが、その機会に、実験的な試みとして、ゲストはお招きせず、<TAG>発起人2人によるリモート生配信を行うことにしました。
テーマは決めずに、近況、豊田のこと、想うことなどをざっくばらんに”放談”したいと思います。
ゲストをお招きしてお話を聞く<TAG>ダイアローグは、ゆくゆくは有観客で、できれば配信も...とも考えていますので、その実験としても行いたいと思います。
みなさんからのコメントや質問にもなるべくお答えしたいと思いますので、どうぞリアルタイムでご視聴ください!お待ちしています。

<TAG>ダイアローグ特別編 <TAG>放談生配信
【日時】9月28日(火)21:00~(1時間ほどの予定)
【出演】石黒秀和、清水雅人
【配信メディア】YouTubeLive <TAG>YouTubeチャンネル → https://www.youtube.com/channel/UCIjZssyxVzbc1yNkQSSW-Hg
※配信URLは当日までに、<TAG>フェイスブックページ、ツイッターにてお知らせします。



2021年8月27日金曜日

【コラム】「説明責任と信頼」清水雅人(2021.8)

豊田とその周辺地域の、演劇・映像・音楽・アートに関する情報と人材のネットワーク<TAG>Toyota Art Geneサイト → http://toyotaartgene.com/


 コロナ禍になって、説明責任について考える場面が増えた。主に豊田ご当地アイドルStar☆T(すたーと)に関してだが、理由は簡単で、これまで当たり前にできていたことを変更する、中止する等が毎日のように起こるからだ。

 わかりやすい例を1つ。
8月中旬にStar☆Tのメンバーの1人が新型コロナウィルス感染症に感染した。当日はStar☆Tのライブ出演はなかったが、翌日は出演予定があり、また、判明した2日前にもライブ開催していた。保健所に確認したところ、感染したメンバーの発症2日前までに他メンバーの接触、ライブ出演はなく、メンバーや関係者、ライブ観覧者等は濃厚接触者には認定されないとのこと。
 ただ、発症3日前には他メンバーと接触しており、さらに5日6日7日前もライブや練習等で長い時間行動を共にしている。
 保健所にそのような事情を話し、心配なので他メンバーも検査が受けられないかと聞いたが、濃厚接触者でないと受けられないとのこと。
 そこで対応を検討する。変異株の感染力の高さは報道等でも聞いているし、若い世代での発症も増えていることも実感しているので、メンバーの連鎖感染やクラスターへの発展を危惧し、自費でのPCR検査を全メンバー実施することとし、結果が判明するまではライブ出演も取りやめることとした。
 ここでまずは翌日のライブ出演取りやめの発表をしなければならない。Star☆Tを目当てにライブ会場に来てくれる人もそれなりにいる。また、数日後にも、その週末にもライブ出演がある。
 なので、サイト及びSNSにて、
・メンバーの1人が新型コロナウィスル感染症に感染した(名前は非公表)
・他のメンバー、関係者は濃厚接触者には認定されない
・ただし、念のため他メンバー全員PCR検査を実施する
・検査結果が判明するまでのライブ出演は取りやめる
の4点を発表した。
 これまでも、Star☆Tについての方針や1つ1つの事業についても、意図や理由などその都度なるべく説明を尽くしてきたつもりだし、その方向性を踏襲すれば、ほぼすべてを隠さずに公表することが得策だと考えたからだ。
 いくつか「Star☆Tやばいんじゃないの?」「この前ライブ行ったけど俺大丈夫?」のようなツイートはあったようだが、直接の意見やクレームはなかったので、この判断と対応を理解いただいたと思っている。

 もちろん、このような発表ができたのは、これまで説明責任を果たしていた実績とファンのみなさんとの信頼関係があってこそだし、また今回のことで、信頼を壊さずに積み重ねられたと思っている。
 Star☆Tのファンの規模だからできることでしょ、という指摘もあるだろう。確かにStar☆Tの動向を気にしてくれているのは数百人程度だと思うので、規模としては小さい。だが、普段のイベント情報等のツイートでのリツイートは多くて20件程度なのが、この発表のリツイートは7件以上とずば抜けて多く(こういう負の情報はより拡散するんですよね)、いつもより多くの人が認識したことも確かだ。

 ちなみにメンバーで実施したPCR検査は全員感染リスク低で(1つ4,000円程度の検査キットを購入して私を含めて12人が実施 確定診断はできないのでリスク高/低の判定とのこと)、1週間後からライブ出演を再開した。

 この一連の事例をもっても、「説明責任を果たすことで信頼関係が築かれ、信頼関係があるから説明責任が果たせる」ということを改めて感じた。

 翻って、ここ最近の行政の対応の事例を2つ挙げる。
※わかりやすい事例として挙げるまでで、決して行政のみを批判する意図ではないことをあらかじめ言っておきます。
 Star☆Tは昨年4、5月の緊急事態宣言明けから豊田スタジアムの広場にてライブを行わせてもらっている。毎月1~2回開催、芝生の観覧スペースは、2m間隔に目印をつけて、それに沿って観覧してもらってきたが、今年6月に、市から、一般のスタジアム来場者とライブ観覧者を分けるよう観覧スペースを柵で囲うこと、観覧者の連絡先を把握することとの指導があった。
 ただ、今年6月からなぜそのようになったかの説明はされなかった(豊田スタジアム側も説明されてないとのこと)。
 先ほどのStar☆Tメンバーコロナ感染に関する保健所との電話でのやり取り。
「発症前1週間で何日もメンバーは接触しているので、PCR検査受けさえてもらえないか」
「濃厚接触者認定されないと検査は受けられない決まりです」
「それなら、自費でPCR検査しようと思うが、市販の検査キットは1万円以上するものから数千円のものまでたくさんある。値段が安いと精度も低いんだろうか」
「なんとも言えません」
「・・・」
ここには信頼を構築するとっかかりはほとんどない。

 「観覧スペースを柵で囲え」と言われて、「なんで今更そんなことしなければならないのか」なんて言うつもりは毛頭ない。必要なことなら、やった方がいいことならやるし、実際6月よりやっている。要は理由を説明して欲しいということで、それは、
「緊急事態宣言になったわけではないが、変異株が増えてきているという情報もあり、より徹底した対策が必要と判断したので」でもいいし、
「やっぱり柵で囲った方がいいんじゃないかと課内で相談してそうなった」でもいい。
コロナに関しては不確かな情報しかない中で判断しなければいけないことが多いこともわかっているし、根拠を示せなんてことも言わない。
「濃厚接触者でないと検査できないと決まっているから」だけでなく「検査範囲を広げる検討もしているところです」とか「県内一緒の対応となっていて、市独自の対策をすることのハードルはかなり高くて」でもいい。
「すみません、市販の検査キットのことは正直わからないんです、薬局等で聞いてみてもらえれば」でもいい。
例えばそのように言ってくれれば、その言葉はその職員さんが自分の言葉で話しているとわかるし、そこには信頼関係の入口が見えると思うのは私だけだろうか。

 そのような対応ができないのは、揚げ足をとって「市がこういうことを言った」と声を大きくするクレイマーがいるから、公平性の観点から個別の回答・個人の考えは話せない、等々が理由だと思うが(私も長年市役所にいてそういう対応をしてきた)、「そんなこと言ったって無理でしょ」で済ましていいのか、、、。合理性から言っても、本当にそれがスムーズな行政運営のためになっているのか、、、。

 もちろん、これは行政だけのことではない。個人同士でも、グループや団体でも、コミュニティでも、お店でも企業でも、「説明責任と信頼」が重要であることはみなさんもわかっていると思う。
 ここで言ったところで、すぐに総理大臣が説明責任を果たすようになる可能性はゼロに近いだろう。でも身近なところから始めて、「説明責任を果たすことで信頼関係が築かれ、信頼関係があるから説明責任が果たせる」という意識・コンセンサスを市単位くらいで作っていくこと、たとえネット上で炎上したって「私たちはわかってるよ」という気持ちを持つことはできるんじゃないかと思う。
 このコラムが、1ミリでもそのような意識・コンセンサス形成のきっかけになればと、本気で思っている。

過去のコラムはこちら → http://toyotaartgene.com/column.html

清水雅人(しみずまさと)プロフィール
2000年頃より自主映画製作を始め、周辺の映画製作団体を統合してM.I.F(ミフ Mikawa Independet Movie Factory)を設立(2016年解散)。監督作「公務員探偵ホーリー2」「箱」などで国内の映画賞を多数受賞。また、全国の自主制作映画を上映する小坂本町一丁目映画祭を開催(2002~2015年に13回)。コミュニティFMにてラジオ番組パーソナリティ、CATVにて番組制作なども行う。
2012年、サラリーマンを退職/独立し豊田星プロを起業。豊田ご当地アイドルStar☆T(すたーと)プロデユースをはじめ、映像制作、イベント企画などを行う。地元の音楽アーティストとの連携を深め、2017年より豊田市駅前GAZAビル南広場にて豊田市民音楽祭との共催による定期ライブを開催。2018年2019年には夏フェス版として☆フェスを同会場にて開催、2,000人を動員。
2016年、豊田では初の市内全域を舞台にした劇場公開作「星めぐりの町」(監督/黒土三男 主演/小林稔侍 2017年全国公開)を支援する団体 映画「星めぐりの町」を実現する会を設立し、制作、フィルムコミッションをサポート。2020年、団体名を「映画街人とよた」に改称し、2021年全国公開映画「僕と彼女とラリーと」支援ほか、豊田市における継続的な映画映像文化振興事業を行う。
2017年より、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員就任し(2020年度終了)、あいちトリエンナーレ関連事業の支援やとよたアートプログラム支援を行う。